第102回『続・宝探し』2005年1月23日
前回昆虫の越冬について絵本を通して触れた。 絵本でも概ね「成虫で越冬」する虫が 中心になっているが ご承知のように、昆虫には、 「卵」・「幼虫」・「蛹」・「成虫」の四ステ-ジがあり、 その、いずれかの形で冬を越すわけである。 例えばカマキリの越冬は「卵」である。 アゲハチョウ、シロチョウの仲間の殆どは「蛹」ですが、 中には幼虫で越冬するものもある。 このように種によって定まっていて、 それぞれ厳しい冬を越すわけであるが いずれにしても、殆どの昆虫は正に「越冬」 しているのであって、活動はしていません。 ところが、 冬だけ出現して活動する変わり者の「蛾」がいる。 専門家によると、20~30種前後いるようだ。 その蛾の仲間は「フユシャク」と 名付けられているグル-プである。 (冬活動する「シャクガ」の意である) |
これが、その変わり者の「蛾」であるが その名は「クロテンフユシャク」 凡そ実物大である。翅があるのがオス、 翅の無いのがメス(英語圏ではスパイダ-モス) オスは翅を持ちメスを求めて飛び回り、 メスは翅を持たず、 木の幹や枝に止ってオスの訪れを待つ。 メスの多くはこのように小さく、翅も全く無いか、 あってもかなり退化していて、 飛べるような翅ではない 樹皮にそっくりで、しかも小さく、 このメスを探すのは容易な事ではない。 3~4年間、冬になると、東京近郊の小金井、 清瀬、狭山ヶ丘あたりの雑木林へ出かけ、 フユシャク調査の、お手伝いをしたが、 一日中、林の中で樹皮と睨めっこをしても、 2~3頭とめぐり逢えればラッキ-。 一頭のメスも目撃せずという日もしばしばであった。 この交尾の写真は数年後に 写真を始めてから、清瀬を訪れ、 ラッキ-にもめぐり逢え、得たものである。 もうこの歳になっては、 冬の雑木林を歩き回り、 この小さな虫を探すことはない。 私にとっては、貴重な一点である。 それにしても、殆どの昆虫は、 10℃くらいから動きが鈍り、 5℃くらいで殆ど動けず、 2℃くらいでつかまっている事さえ出来ないのに、 冬に現れ、交尾をし、メスは産卵、 卵は木の芽がでる春に孵化 いわゆる「しゃくとりむし」になり 2~3週間で蛹になり、 夏、秋を過ごし、寒くなってから現れる。 何とも変わっている。 皆と同じ道を行くと安全そうだが、 競走が大変だから、他の道を選ぶ。 人と違う道、それはそれで大変だが、 有効な選択肢の一つである。 |
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