第141回『ナツツバキ』2005年6月25日
団地の中に「ナツツバキ」が10本以上あることに 気が付いたのは越してきてから3年くらいしてからで それまで気付かずにいた。 大きな木を移植したので1~2年は 花もあまり付かず見逃していたようだ。 喬木で、高い木は4~5メ-トルもあり、 高い所でひっそり咲いているし、 明るい夏に白い花なので 一層目立たない。 これ見よがしのカラフルな花と違って慎ましやかでる。 |
夏、花を付けるのは、ツバキ科では珍しい。 「サザンカ」も「チャ」(茶)もツバキ科であるが、 花は、晩秋から春である。 最も生活に身近な「茶」も開花期は冬であるが、 ナツツバキより、小ぶりの白い花を咲かせる。 これも可愛らしく、品の良い和菓子のようである。 昔から神棚に上げたり、神道で使われる、 サカキ、ヒサカキもツバキの仲間であるが、 花が他の仲間に比べ著しく小さいので、 同じツバキ科とは思ってもいなかった。 牧野さんの図鑑には、 山中に自生しているとあるが、 不注意のためか、山中で見たことはない。 団地では、昨年は6月中旬から咲き始めたが、 今年は少し遅れ気味で2~3日前から咲き始めた。 蒸し暑い季節に一服の清涼剤である。 俳句の本を調べてみると、 ナツツバキを詠んだものは意外に少ない。 そして、 「ナツツバキ」と詠んでいるものは更に少なく、 殆どが、別名「シャラ」(沙羅)の方が多い。 「沙羅の花捨て身の落花惜しみなく」 (石田波郷) 「沙羅の花もうおしまいや屋根の上」 (山口青邨) いずれも散り際のあっけなさを詠んでいる通り、 花びらが変色もしないうちに、 白いまま、潔く散る花である。 この別名「シャラ」も、牧野富太郎先生によると、 インドのシャラノキと間違ったことに基づくとあるが 既に定着してしまっている。 俳句の世界ではことさらに 「沙羅」の方が好まれて使われている。 「沙羅双樹」ともいわれ、 お釈迦様の涅槃の四隅に 二本ずつ生えていたと伝えられている。 我が友、木石さんは 「沙羅双樹咲けども涅槃の夢遠し」 と詠み、 暗にお迎えが遅いと云っているようであるが 未だ少し早すぎる。 |
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