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169回『ジョウビタキ』2006年1月26日

ほんの少しでも野鳥に関心がある人ならば知っている、
雀ほどの大きさの鳥である。



上の絵のような姿である。
カラフルで美しく比較的低い枝にも
止まってくれるのでよく見ることが出来る。
冬鳥なので見られるのは冬だけで、
春には、もう少し北のサハリンや中国大陸へ渡ってしまう。

ジョウビタキの姿を見かけると、いつも晩年の母を思い出す。

母が特別野鳥に関心を寄せていたわけではないが、
食事が済むと、パンくずや飯粒を庭先に撒き
食べに来るスズメ、セキレイ、ヒヨドリ
などの姿を見て楽しんでいた。

そして初冬から来る、ジョウビタキの姿を見ると、
「きれいな鳥が来ているよ」と指差し教えてくれる。
特徴のある鳥だから私には直ぐ判る。

母は毎度のように鳥の名を訊ねる。
その都度「あれはジョウビタキという鳥ですよ」と教えるが
どうも覚えられないようだ。
別にボケていた訳ではない。

現在の私の年齢は最晩年の母の年齢までには
未だ10年余あるが、
昆虫以外の事柄に関しての記憶力は五十歩百歩である。

しかし、古いことは覚えているもので、
「ジョウビタキ」を見かけると、既に20年近くも前の
母とのやり取りが思い出される。

そして、パン屑を啄ばむ小鳥達の姿を、
優しい眼差しで見つめていた
母の姿も同時に思い浮かべている。

私にとってジョウビタキに会うことは
イコ-ル、母に会うことでもある。



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