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第172回『ギンヤンマ』
2006年2月12日

ついでの事に、三つ目の記憶の
昆虫の話にお付き合いいただこう。

東京の牛込(今の新宿区)に生まれ
11歳まで(1933~1944年)そこで過ごした。
当時家の近くに200~300坪の原っぱがあり
夏の夕方になると、
空にはギンヤンマの雌雄がたくさん旋回していた。

子供達はギンヤンマを「ギン」と呼び、
メスを「チャン」と呼んでいた。
「チャン」には翅が渋を引いたように褐色のがいる。
それを「シブチャン」と呼んでいた。

「ギン」と「チャンが連結して飛んでいるのは「ギンノ-ツ」
「ギンの「尾つながり」を詰めていったものであろう。

ヤンマの類は他のトンボのように
あまり止ることがない。
ひたすら縄張り内旋回をしている。
稀に止るときは、高い枝にぶら下がるように止る。
これを「ギンブラ」と云った。


(j時間切れで未完です、完成したら別に入れます)

夕方大勢の子供達が手に手に、
長いもち竿を持って集まってきて
「ギン」だ「チャン」と叫び声をあげ
上空のヤンマをもち竿で捕らえようと
必死に振りまわし駆けずり回っていた。

今はトンボ取りに「もち竿」などを
使わないので知らない人も多いと思う。
簡単に言えば「釣り竿」に「とりもち」を
細い先端から50~60センチまで塗り付けたものである。
「とりもち」は子供相手の駄菓子屋などで
必ず売っていたものである。

ヤンマ採りのユニ-クな方法が他に一つある。
30センチ~50センチのタコ糸の両端に、
布で包んだ小石を結びつける。
これだけであるから誰にも出きる。

片端の小石を持ち、
回転するように上空へ放り上げる。
両端の小石の錘でタコ糸は
ピ-ンと張り回転しながら上がり、
そして落ちて来る時、餌かと思って
寄って来たヤンマを絡めてくるという寸法である。
偉そうに解説したが、言うは安く、
実際は何十回放り上げても空振りばかり、
一度も捕らえたことはない。

当時はテレビもゲ-ムもない時代、夏の夕方は、
こんなことに夢中になり暗くなるまで遊んだ。

今でもその情景と、「ギン」だ「シブチャン」だと
叫ぶ声が耳の底に残っている。



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