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第21回「ひとりしずか」2004年4月3日


花咲くや君の生まれし日のままに

と、木石氏は詠み、
4月3日生れの、
ガ-ルフレンドに送るんだが
何か添える写真はないかと云われ、
花ごよみを調べ、4月3日は
「ひとりしずか」である事を知り、
彼の句にこの写真をあしらい
ハガキをつくり木石氏に送った。

誕生祝いに贈られた彼女は
大喜びしたに違いあるまい

まったく心憎いことをする男である。
今日はその木石氏からの
寄稿を以下に披露しましょう

オペを待つ窓に仲よく鳥さかる

突然、俳句を詠みあげた老女がいる。
病院のデイル-ムで、
朝の『テレビ小説』を見ているときである
ひとり言かと思い、様子をうかがうと、
私の顔をじ-っと見ている

「いいですね、もう一度聞かせてください」
そう応えると
「鳥さかる、ではイヤらしいですか」と云う。

「それより、仲よくと、さかるでは、
意味が重なりませんか」
とたずねると、
「そうですね」と
手元のノ-トに目をおとした。
その体がわずかに左右に揺れている。

病室に戻ってベッドで本を読んでいると、
フッと足下に老女が現れた。

オペを待つ窓賑やかに鳥さかる

それだけを告げると、足を引き擦りながら
老女は部屋を出て行った。

翌朝デイル-ムに顔を出すと
テ-ブルの上に、
老女が短冊を広げていた。

挨拶をしながら、さりげなく手元を見ると、
「オペを待つ」があった。

手術(オペ)を待つ窓賑わいて鳥交る

あっと思った。聞き違えていた。
「賑やかに」でなく「賑わいて」であった。
語感の違い、素養の差である。

「さかる」も「交る」だ。
これも文字が浮かばなかった。

自分には
俳句は作ることが出来ないようだ・・・
短冊に見入っている老女を眺めながら、
私はしみじみと納得したのである。


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