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第247回『感動のドラマ』
2007/08/14

五日の野外講座の日に大夕立があったきり
一滴の雨も降らず、暑い!暑い!日が続き
何も手につかず過ごしているうちにお盆も過ぎてしまった。

それでも気を奮い立ててカメラを持って野外に出るが、
カメラが触れぬほどに暑くなるようでは
昆虫達の姿も少ない。
十日に兄を見舞いに御代田まで行き、途中の公園などで
昆虫の姿を探しながら炎天を歩いて行ったが、
たいした収穫もなく、病院に着いてしまった。

兄は思ったよりも元気で翌日には退院と聞き
安心して病院をでて駅にむかう。

帰りも歩きながら、昆虫との出会いを期待したが収穫なし。
駅に着くと電車は行ってしまったばかり、
小一時間待たなければならず三十分ほど
待合室にいたが、ホ−ムに出て、
植え込みや花壇をみてあるいたがやはり収穫なし。

電車がくる間際になって家内が毛虫がいるというので、
見ると、どうやらヒョウモンチョウの
幼虫らしいので一二枚撮って、ついでに採集し持って帰った。

調べるとツマグロヒョウモンの幼虫であるかことが判った。(写真一番上)ツマグロヒョウモンは暖地系のチョウであるが近年分布域を徐々に北へ北へ広げ、関東では普通に見られるし、このように信州でも定着しているようである。黒と濃いオレンジでトゲトゲの恐ろしげな幼虫であるが、毒はない。持ち帰ったその日に飼育容器に尾端でぶら下がり、前蛹になり、翌日には蛹化した。そのプロセスを撮ることが出来た。(写真二番目)タテハ、ヒョウモン、マダラチョウの類は「垂蛹」といって、予め張り巡らした糸にぶら下がるようにして蛹になる。
そのプロセスは逆さ吊りの常態で行われるので曲芸を見るようで、はらはらしっぱなしである。
とげとげの皮を脱ぐとご覧のような色彩の蛹が現れるが当初は柔らかく傷つきやすいので触れることは厳禁。数時間の間に外皮が徐々に硬くなり色彩も少しずつ変化し、幼虫時代と同じような突起があることもはっきりしてくる。(写真三番目)
狭い容器の中では羽化の際に差し障りもあるので蛹がしっかりしてから、網目のように張り巡らされた糸ごとそっと剥がし、木の葉の裏へ接着、羽化を待った。
一昨日くらいから、蛹の皮を通して翅の模様が透けて見えてきた。今朝は早起きをして(5時)見ると間もなく羽化しそうなのでカメラを準備待つこと30分、羽化が始まった。幼虫の発見者、家内も起して、ツマグロヒョウモン誕生のドラマを二人で観て撮影。こんなに、すんなりと撮れたことは珍しい。しかし何回立ち会っても誕生の瞬間は素晴らしく感動的である。



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