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第256回『亡き友の傑作』
2007/11/06

長い長い人生で、さまざまな人と出会う。
小さい頃の近所の遊び仲間に始まり
学生生活で出逢った友人、仕事がきっかけ、
旅先で知り合う、それはいろいろである。

M・Tさんの場合、私が写真家として独立して間もなくの頃、
あちらから声がかかり、
昆虫の標本の写真撮影を依頼されたのがきっかけであったが、
馬が合ったというか、単にお互い酒好きであったからか、
その辺はどうでも良いが、それ以来遊びに、仕事に深くかかわった。

彼が48歳という若さで亡くなってしまったため、
その期間はわずか15年余であった。

広告関係のプランナ−であり、イラストレ−タ−であり、
デザイナ−でもある多才な人であった。
今までに、この「一服」に、
しばしば登場していただいている木石さんと同郷の親友であり
三人で、よく飲み、よく遊び、仕事を楽しんだ。

そんな関係であったから気安くプライベ−トな、
挨拶状や、案内状などもよく造ってもらった。
その中から、ひとつ残っていた傑作を
ご披露しようと思う。引越しの案内状である。



この引越し案内状のイラストが、
故 Mr M・Tが描いてくれたもので、
大風呂敷を担いで大またで歩く家内、
そして、その荷物にしがみついているのが私。

オリジナルでは青梅街道が描かれ、
「青梅街道をひと跨ぎ」のコピ−が添えられていた。

あまりの傑作に、
その後の引越しにも転用させてもらったわけである。
顔の特徴を簡単に捉え、家内の歩き方も完璧に捉えている。
且、私が「お荷物」であることも
しっかり表現されていて感心させられると同時に
暫くは笑いが止まらなかった。

亡くなって既に25年以上になるが、
今でも彼のことは木石さんと逢うとしばしば話題になる。
彼はどんな仕事でも楽しんでいた。時に洒落、
冗談がいきすぎることもあり軌道修正が必要であったが、
その軌道修正のプロセスすら楽しんでしまう、
とにかく楽しい男であった。

今この時代に彼がいたらパソコンを駆使し、
更に楽しんだであろうなあ、などと想像している。



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