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第279回『杜撰な脳みそ』
2008/06/30

蝶は花から花へと飛び回っている時は
当然甘い蜜を求めているわけであるが、
草むらを、あれこれ調べるように、
葉っぱ、すれすれに飛び回ったり、時々止まったりしているのは
メスの蝶が自分の子どもが食べる草(食草)を探している時である。
視覚、嗅覚、触覚を総動員して、
多くの植物の中から探すわけである。
そして、間違うことなく食草を探し当てて産卵する。

今「間違うことなく」と書いたが、本当に間違わないのだろうか?
蝶の幼虫を探す時、その食草を探せば、
そこに幼虫がいるので、必ず親である母蝶が
食草を間違えることなくなく産んでいるんだと、
勝手に思い込んでいた。

よく考えると、それぞれの食草で
それぞれの幼虫が見つかったからといって
親が「間違えなく食草に産卵」するという証明にはなっていない。

こんな簡単な論理に何故今まで気付かなかったのか?
こんな疑問を持ったのは、先日撮影に出て、
韮崎近くで目撃した場面からである。



ルリシジミの産卵の瞬間である。
ルリシジミはマメ科の花の蕾に産卵するものと思い込んでいた
(まさに思い込みであった)
殆どの図鑑にそう記載されているので疑わなかったが
今この項を書きながら確認したらルリシジミの食性は
かなり広く、タデ科、ミズキ科、バラ科など
けっこう広いことを知り驚いた次第。
この写真はヨウシュヤマゴボウの花の蕾に産卵している。

ヨウシュヤマゴボウは記載されている科に入っていないから
といって母親が間違えたと言う気はない。
この項の書き始めには、上の写真を証拠に、
蝶の母親も食草を間違える事もあるということを示し
同時に、その間違いが案外食性を広げていくのではないか
と言う事を書こうと思っていたが
ここまできて、蝶の幼虫の食性は実は私が思っていたより
幅が広かった事を知って驚いているのだ。

「蛾」に比べて、蝶の食性がはるかに狭いのは
よく知られている事実であるが
ルリシジミのように複数の科に亘って
食すのもいるわけであるから、
我々が知らないだけで食性の広い蝶が未だ他にも
あると思った方がよいのかもしれない。

こんなことを考えながらもう一点、
産卵の瞬間の写真があったことを思い出した。



スジグロチョウの産卵の瞬間、
三個目の卵が尾端から産み出されている。

写真としてよい瞬間であると云うことばかり頭にあって、
食草に考えが及んでいなかった。
モンシロチョウの近縁であるから、
食草はアブラナ科の数種と、勝手に決めていたが、
改めて調べみるとると、数種のアブラナ科と、
フウチョウソウ科のセイヨウフウチョウソウなども
食すと記載されていた。

こんな身近な、蝶なのに、食草について知らなかったことを、
大変恥かしく思っている。
知らなかったことを恥じると言うより、
モンシロチョウの近縁だから食草はアブラナ科であろうと、
勝手に思い込んでいること、これが、誠によろしくない。

今ここで改めて写真を子細に見ているわけだが、
卵が産みつけられている植物が何であるか
葉と茎だけでは解らずにいる、アブラナ科でないことは確かだ。
記載があったフウチョウソウでもなさそうである、
それでは何か?
今回は恥を曝したようのものであるが、
大いに収穫があったと負け惜しみでなく思っている。



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