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第282回「扶養家族「ヒヨ」顛末記」
2008/07/24

前回記したように四、五日経った7月19日、
「ヒヨ」を開放することにしたが、とにかく初めての事
心配なので、団地の中にある、植え込みもあり、ベンチもある、
ちょっとした広場へ、籠を持って行き
扉を上げて様子を見ることにした。

一気に飛び出して、木の梢まで飛んでいって、くれれば良いが、
そのまま行かれてしまうのも寂しいし
かといって、元気がないのも困るしなどと考えていた。



籠が開けられてヒヨは出口で暫くたちどまっていたが、
その顔は、なんとも不安そうで心もとない。
暫くして草むらにとび出して、
あちこち突き始め、餌を漁り始めたようである。

しかし、あまり遠くへ行く気はなさそうであるし、
飛翔力も未だ、と云う感じで、このまま放置したら
ネコ、カラスなどの餌食になりそうでちょっと無理かなと思い
近付いていってみると下の写真のような始末



この、あまえる仕種をみせられてはどうにもならず、
籠へ逆戻り、開放失敗に終ってしまった。
結局、贅沢にも散歩につれて出たようなもので、
帰って来て考え込んでしまった。

生き物は好きだが、飼えば縛られ、
旅にも出られず困るので30年以上も何も飼ってこなかった。
飼ってきたのは、「昆虫」だけである。
昆虫もけっこう厄介ではあるが、あまり情がからまないから気楽である。

昆虫には上の写真のような表情はない。
昆虫の中で表情らしきものがあるとすれば
それは、カマキリだけであろう。
しかし、その表情も、この「ヒヨ」ほどに訴えるものではない。

翌日も散歩のつもり、そして、慣れてもらうつもりで連れて出た。
昨日よりはやや不安気はない。
砂を啄ばみ、盛んにアリをつついて、食べているのが見られた。
やはり昆虫などの動物蛋白が必要なのであろう。
与えている餌では足りないようだ。

そんな様子を見ていると、心なしか羽の色艶が悪く
なったようにも見受けられ心配になってきた。
この日も結局又連れて帰る事になってしまった。

翌日、ネットで調べ
鳥類保護連盟安曇野支部へ相談の電話をした。
いろいろお話をしたが、結局は自分で決断するしかなく、
その翌日(21日)開放する事に決めた。

見ていたら又連れ帰ることになるので、
籠から飛び出したヒヨに別れを告げ、
振り返らず一目散に駆け戻るように帰ってきた。

それから4日になる。この近辺には数種の野鳥がいて、
さえずりが聞こえる。そしてその中には
ヒヨドリの親の声、雛らしき声、
若鳥らしき声、さまざま聞こえる。

中にはハッとする、もしかして、
あのヒヨではないかと思われる声もあり、気になって仕方がない。
まあ幸運を祈るしかない。

「ヒヨ、がんばって一人前になってたまには姿を見せろよ!」



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