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第286回『ないしょ・ないしょ』
2008/09/26

ちょうど1ヶ月ほどまえ偶然眼の端に捉えていたものがある。
その時は「鳥の巣」だと思っていて確認する閑がなかった。
後でと思って数日後確認したところ鳥の巣ではなく
スズメバチの巣であった。

通路から2メ−トルほど入った植え込みの、
「ハナミズキ」の上3メ−トルあたりの葉の茂った中。
球形の巣の直径は12センチくらいの小さなものであった。

通路にも近いし、市の住宅関係へ知らせようと
一瞬は考えたが、知らせれば業者が来て
必要以上に木の枝を切りまくり、
巣を取り除いていくであろうと考えると
知らせることにちょっと待ったをかけ、観察することにした。

路を挟んだ向こう側の街路樹は毎年葉が茂っている間、
スズメ、ムクドリなどの「ねぐら」になる。
数千羽は集まるからかなり賑やかであり、
「ねぐら」の下は糞害で真っ白になる。

ある日植木屋であろうか、大勢で来て街路樹の枝降ろしが始まった
瞬く間に、欅の枝はスカスカになり、
夕暮れに寝に来た鳥達は右往左往。

そんな、荒っぽいことを見ていたせいか、
「スズメバチの巣」の存在は知らせないことにした。

調べたところ、「コガタノスズメバチ」という種らしく、
比較的おとなしいことも判った。
通るたびに覗いてみると巣の表面に数匹の蜂が見られるが、
警戒するふうもない。
しかし、発見した当時より巣は確実に大きくなり
今ではバレ−ボ−ルを超えるか。



球形の巣の中は5〜7層の高層マンションになっていて、
各室には幼虫が育っている。
新しい女王も生まれて来るであろう。
そして新しい女王が巣から飛び立つまで
誰にも知られず無事に過ごしてくれることを願っている。

見つけ次第皆殺し作戦しか考えない人間は困ったもので、
なぜ共存の可能性を考えないのか
鳥のねぐらの問題も然り、
ねぐらに暫く貸してやってもよいではないか

これは感傷でもなんでもない、人類が人類の事しか
考えてこなかったから既にさまざまな形で
その酬いを受けているではないか。
それでも未だ懲りずに「共存」を考えないでいる
人類の知恵はその程度のものか!腹立たしい限りである。



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