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第53回「スナップ」2004年7月23日


昆虫の生態を自然のままにカメラに収める事を
仕事として長年やってきたが、
自身は「昆虫一筋」とは思っていなし
凝り固まってもいない。
他の被写体にも常に目が行くし、シャッタ-も押す。

昆虫に密接に係わる花、自然の風景なども当然撮る。
そしてもっとも身近な存在である「人」は
今いちばん興味を持っている被写体であって、
レンズを向ける事が多い。

そんな時も当然昆虫を撮る時と同じで、そっと、
できれば気付かれないように撮りたい
と言っても、なかなかチャンスは少ない。
撮られる方はレンズを向けられている事に
たいていは気付いてしまい、
瞬時に表情が硬くなったり、
おどけてみたり、つまり不自然な表情になる。

そのての写真はつまらない。
従って、被写体である人が仕事にしても
遊びにしても、何かに集中している時は
カメラなど意識していないので撮りやすい。
例えば職人さんが何か細工に集中しているような
作品をよく見るが非常に良い表情が捉えられている。

「人間」と言う生き物は、殆ど顔の表情だけで、
喜び、悲しみ、怒り、驚き、焦燥、躊躇等など
あらゆる表現をし、相手に伝えることができる。
当然意識的に表情を作ることができるので
芝居や映画が成り立つわけであるが、
下手な演技者の表情には、ぎこちなさ、
不自然さが見えてしまう。

我々は演技者ではないから当然意識した
とたんに、表情が不自然になる。
無意識である時は、つまり自然に振舞っている時は
表情が自然で、活き活きとしている。
そんな表情を撮りたいと思っているから、
記念撮影的なショットは撮りたくない。
常にスナップショトを心がけている。

写真は大勢の友人達が集まって宴会を楽しんだ時の
一こまである。被写体はいざしらず私は
気に入っているショットだ。
「人」も先ず生き物であるから、
物を食べるという行為は本能的な行為であって
特に親しい友人達との会食では、
リラックスしているので
格好な被写体になった。

美味そうなもの、自分の大好物を目にしたとき、
そして、まさにそれにかぶりついた瞬間
又、それが期待通りに美味かった時に
示す表情は至福そのものである。

左の女性の眼差し、大きく開けた口、一杯に
伸ばした首、全てから美味しさが伝わってくる

右の男性は前回にも登場戴いた鈴木さん、
彼は本当に人柄もよく博学であり、
常に穏やかな人物で尊敬している。
ちょっと解りにくい面があるので、
この表情も測りかねるが
囲炉裏の炭火で焼いた岩魚にかぶりつき、
口に含んだ瞬間である。なんともいえぬ表情である。



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