第67回「窯元を訪ねる」2004年9月8日
第63回「壺裏春」でご紹介した陶芸家、塙さんに お招き戴き4日土曜日に窯のあるご自宅を訪問した。 車を持たない我々は篠ノ井から 村営バス大岡行きに乗り50分、離山で下車 ぶらぶらと、景色を眺め、花や虫の写真を撮りながら 30分ほどで「神王窯」の看板を目にし 左に折れ間もなく到着。 玄関先に作務衣の丸刈り頭の若者が 竹箒で掃除をしていた。 我々をみとめ、にこやかに会釈をし奥へ。 こんな風景は最近お目にかかったことが無いなあなどと 考えていると、ご主人の塙さんが 迎えにでてくださり先ず窯を案内してくださった。 |
この窯に春、秋2回、整形された器が運び込まれ 火入れが行われる、火は1週間連続で炊かれ その間に2000束の薪が燃やされると伺った。 何か厳粛な火祭りを想像し、 そして火の熱さと同時に、その時の塙さんの 作品に対する熱い心が伝わってきた。 ギャラリ-兼応接間に案内され、 一歩入った途端に、多くの作品群に圧倒され、 一点ずつ詳細に拝見する余裕もなく、 ただただ作品群を眺め、惹かれ、シャッタ-をきる。 |
左の中央の大きな2個の壺は成型し 乾燥中のものでまだ焼き締めていないもの。 塙さんは全て轆轤を使わず、 輪積みという手法で成型するそうです。 輪積みというのはこねた土をひも状にして積み、 指と木べらで形を整え、乾かしては積み重ね 成型していくという古来からある手法で、 縄文土器は同じようにして成型されたようだ。 そして、釉薬は使わない。 しかし焼き締められた、花器、壺、酒器など 渋いけれど色彩が美しく微妙な変化が見られる。 専門的なことは判らぬが、 見ていると段々と引き込まれていく。 釉薬を使ってカラフルに彩られた洋食器とは対照的で、 奥ゆかしい魅力を秘めている。 いろいろお話を伺いながら、作品そのものである器で お茶を戴き、暫く庭や周辺を散策する。 ここは信州新町の弘崎という所で 大岡村に隣接した眺望抜群のところである、 晴れていれば北アルプスが望める位置であるが、 あいにくの天気で北アルプスは微かに見える程度であった。 遠望が利かなければ、すぐ身近にある花や虫に 目が行ってしまうのは長年の習性、 早速、路上に横たわる大きなクモを見つけ、しゃがみこむ。 予想どうり2分もしないうち オオモンクロベッコウがやってきた。 |
このクモを狩りした「狩人蜂」である。 麻酔した獲物を巣穴へ運ぶ途中邪魔が入って 近くへ避けていたのが戻ってきたわけである。 この蜂は地中に穴を掘り巣にするが、この蜂を見て 土をこねて壺作りをする蜂を思い出した。 塙さんの壺作り手法と殆ど変わらない。 土を地面から口で齧りとり唾液と混ぜ小豆粒ほどの 大きさになると持ち帰り、壺の外壁を立ち上げていく 全く輪積みと同じ手法で壺を作り、 クモや青虫を溜め込み、産卵し封をする。 つまり幼虫のための巣というか 揺籃を造るわけである。 この蜂の話を塙さんにすると、 壺ではないが、壁などに、なまこ型のものを造る 蜂の存在には気付かれていらした。 精巧な徳利型、つぼ型はご覧になった事は ないようで、興味深く聴いてくださった。 話が弾み、昼食に手打ちの美味しいうどん、 名物のこんにゃく寿司、 そして塙さんが命名された地酒「狼鶴の郷」 を戴き夕方までお邪魔し、且つ 帰りは自宅までお送り戴いた。 カメラマンの性で、魅力的なもの、美しいものは どうしても撮りたくなり、ずうずうしく、 成型の過程、火入れなど撮らせて戴きたいと お願いまでしてしまった。 10月の火入れが楽しみである。 |
(戻る)
(EOF)