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第79回「秋の山道」
2004年10月21日

 14日に大岡村の「離山」というバス停から、
塙さんの「神王窯」まで、ゆっくりと歩いた。

だらだらと下る山道の左手は、
段々田んぼで、
何処も既に刈られた稲が、
はぜ架けに架けられて、
すっかり秋。

そんな景色を横目で眺めながら
足元の花や、
花に来ている蟲や、
叢に何かいるのではないかと、
厳しく眼を光らせながら歩いている。

少し眼が慣れてくると、いろいろと見えてくる。

先ず、ヨメナにベニシジミ。
春先からどこにでも現れるが、
可憐なチョウで、
ついレンズを向けてしまう。

次はモンシロチョウに似ているが、
別種のスジグロチョウ。

幼虫の食草も同じようにアブラナ科ではあるが
野生種の方が好みのようだ。
従ってキャベツや、ブロッコリ-畑には
あまり現れない。
やや山手に多く見られる。

こうして、道沿いの花や、
叢に眼を凝らし、
いつも見かける馴染みの奴、
久しぶりの奴、
初対面の奴に出会いながら
カメラに収め歩いていると
3~5キロは全く苦にならない。

苦にならないどころか楽しくて
しかたがないから、疲れない。

暫く行くと道の真ん中にシマヘビ、
よく見るとどうも交通事故に遭ったらしい。
この道の交通量は一日せいぜい5~6台だと思う。
とすればなんと運の悪い奴。
事故現場は必ずカメラに収める、

去年はアンズの里近くで「狸」らしい被害者、
西表では被害者「セマルハコガメ」を収めた。
ほんとうに野生動物にとっても
住みにくい世の中になったものである。

デジカメになって、
フィルム代を気にせず撮れるので、
昆虫以外にもレンズを向ける事が
更に多くなった。

日当たりの良い南斜面は
クズの葉で覆われている。

葉の上に、秋を代表する蟲、
セスジツユムシ、
声は「ジ-・ジ-」と地味であるが、
姿はなかなかシャ-プ。
この思い切り長いスリムな脚を見ると、
どうしてもマレ-ネ・デイトリッヒを
思い浮かべてしまう。

真面目に昆虫の生態写真を
撮っているかと思えば、さにあらず。
連想は往年の脚線美
を誇る女優である。

頭の中は、さまざま錯綜しているが、
それが写真を撮っている時の
楽しさの一つでもある。

しかし、眼くばりだけは厳しく、
何一つ見逃さないぞと
四方八方をにらみながら歩く。

なにやら、美しい「草の実」を見つける。
近寄れないのでちょっと長いレンズに
付け替え収める

テンナンショウ科(こんにゃくの仲間)
の実である事は分ったが、
詳しくは分らない。
やがては全て真っ赤になり
更に秋らしくなる。

家内は、野草が好きで一緒についてくるが、
最近は、かなり「蟲」も見えるようになり、
いろいろ
「ほら!あすこに、ほらあの葉っぱに」
と教えてくれる。
四つの眼で見ているから効率がよい。

これは、オツネントンボ。
なんの変哲も無いイトトンボの一種であるが、
成虫で冬を越す数少ないトンボで、
6月頃から羽化するが未成熟で、
冬を越し来春になって成熟する変わり者。
(殆どの昆虫は羽化して間もなく成熟、
即繁殖可能である)

これは家内が見つけた、
このように地味な色彩の小さな存在は
見過ごしてしまうことが多くなってきたので、
四つの眼でカバ-。

左のシ-タテハのような派手な存在は
見過ごす事は無い。
しかし、活発なチョウで
簡単に撮らせてはくれない、

150ミリの望遠接写レンズの威力で
今回は2~3枚収めることが出来た。
背景の秋の色はガマズミのようだ。
全く「秋」の色彩。

塙さんの家まで2キロ足らずの距離であるが、
1時間~2時間くらいかけてあるき、
このような蟲や植物に出会え、
良い写真が撮れご機嫌である。



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