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第80回「柿」2004年10月24日

「近頃のガキは柿も食わないらしい」などという、
親父の駄洒落が電車の中で聞こえてくる。
外を見れば、秋一色、
紅葉しかけた田園風景の中に、
色づいた柿の木がちらほら見える。


駄洒落はつまらぬが鋭い、
確かにこの頃は、
ガキに限らず、みんな、
昔ほど柿をたべない

子供の頃(60年前)は柿、りんごなど果物は
貴重なもので、
めったなことでは口に入らない

当時は常に腹がへっていたし、
何とかして喰ってやろうと、隙を狙うが、
いじわる婆や爺が眼を光らせていて、
口にするのは難しかった。

今は豊なのか、誰も採らず盗まず、
枝に成ったまま、
朽ち果てているのがしばしばある。

リンゴなどは商品として今でも人気があるから
きちんと栽培、管理されているが、
柿は人気が無いのであろうか?

私は結構柿は好きで、今でも
しばしばデザ-トに戴くが、
人気の無さの理由が分らない。

味とは別に、秋の風景には欠かせないものと
思っているくらい、私は好きである

柿の木の姿の自然さ、
果実の色の華やかさは、
秋の風景を一段と引き締めている。

小学六年の工作の時間に粘土を与えられ
何か造れといわれ、
柿の一枝をモチ-フにレリ-フを造り
彩色して仕上げた記憶が今でもある。
作品は手元に無いが昔住んでいた家を
探せば出てくるかもしれない。

柿が何故好きかと聞かれても
明確には答えられぬが、
そんな頃から好きであったことは
確かのようだ。

そして、「干し柿」も好きだ。
生の柿の色を保ち、
表面に真っ白く粉がふいた、
如何にも「商品」といったものより
出来上がりの色が、
黒ずんでいて見場は良くないが、
軒先で干された、手造りの、
こんなのが好きだ。

このような風景も
なかなか見られなくなってしまったが、
頑なに秋の行事の一つとして、
しっかりと、まもっている家もある。
いつまでも続けて欲しいものだ。




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