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第321回『西はどっち』2009/11/20

世間には白髪の爺さんなど珍しくないはずなのに
何故か目立つようで近隣の子どもたちは
珍しい生き物でも見る目をして
恐る恐る私を観察している。

勇気を奮って大きな声で「こんにちは」
と声をかける子も稀にある。

それが8月の展覧会以降、
有線放送の宣伝のためか、
気軽に「虫博士」と
声をかけてくるようになった。

先ごろ数人の女子小学生に呼び止められ、
飼育容器ごと渡され、
「これはなんでっすか」と聞かれ、
覗くと大きな芋虫が5〜6匹入っていた。

「家の朝顔に」ついていたという。
スズメガというジェット機型の蛾のグループがあり、
その一種の幼虫であることは知っていたが
正確を規すために調べようと預かって
帰ろうとすると、ぞろぞろ皆ついてきて

部屋まで上がってきて大騒ぎ、
夕方で帰る時間だからまた来るといって
帰っていったが、その後日も違う子どもたちも含め、
「何か虫を見せて」と尋ねてくる。

その芋虫は有難く頂いて飼い始めたが、
体長6〜7センチもあり、
朝顔の葉を、食べること食べること、

我家のベランダに残っていた朝顔は一日ももたず、
その後は、あちこち探して歩く始末であった。
嫌いな人が多いかもしれないがご覧頂こう。

葉がなくなって蔓をを齧っている、
エビガラすずめの幼虫である。

数日後には容器の中の土中にもぐりこんでしまった。
蛹になる前に土中にもぐり、
蛹化し来年の夏まで蛹で過ごす。

朝顔と同じ仲間のサツマイモの葉も食べるので、
秋、畑を耕している折に
見たことがあるという方もあるはず。

(下の写真はエビガラスズメの蛹)

蛾として大型の部類ですから
蛹も大きく小指ほどあります。

昔、蛹を見つけた子どもたちが、
そっと指で持ち、腹を上の方向へ向け、
「西はどっち」と蛹に問いかけながら、
微かに指先に力を加えると
「蛹の腹部が、くるっ、くるっ、
と動き先端があちこちを向く。

これといって玩具も無い時代の
子どもの玩具でもあったわけである。

「西はどっち」は実際には
「にしゃぁどっち」と聞こえたが、
現千曲市辺りでは「にしゃぁどっち」が、
そのまま、土中の蛾の蛹の総称になっている。

ついでのことに成虫のジェット機もご覧ください。



羽化したばかりの横からの姿で、
シャープな形でないが、
数時間後には立派なジェット機になる。




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