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第44回「四国旅日記-最終回」2004年6月22日


夕方までに松山に着けばよいので
昼頃まで宇和島の山城などを歩き、
昼食に入ったうどん屋の親父の
薦めで、松山の少し手前にある「内子」
という古い街に寄ることにした。

下調べをしない旅なので
初めて聞く町名であった。

江戸末期から明治まで、
木蝋(はぜの実から採る蝋)の生産で
栄えた町で、観光客が見学できる
当時の有力者の屋敷へ入ってみた。

敷地も大きく豪壮な屋敷であったが
よく考えて見れば、屋敷とは言うものの、
屋敷内には、櫨の実を絞るところ、
釜場等など、作業場であり、
製品の置き場であり、
自宅でもある訳だから、
当然といえば当然の広さである。

勿論、建物そのもの、
がっしりとした造りであり、
贅を尽くしたもので、
国の重要文化財に指定されている。

順路通リ一巡り見学、
元座敷であろうか、喫茶営業をしていた。
落ち着いた雰囲気で、他に客もなし、
ゆっくり一休みできそうなので
紅茶を頼みくつろぐ事にした。
待つ間、床の間や、
欄間の彫りや建具など、
細部を見たがさすがに、
欅、桜など硬い材質が使われていて、
100年以上経ていても一分の隙も無い、
見事な普請であったが、
障子戸の腰に嵌め込まれたガラスは
全体に歪み波を打っていた。

ガラスに映った歪んだ己の顔を
面白く見ながら・・・・・・
という事はこのガラスも当時のものであろう。
この時代はガラスなどは
贅沢なもので普通の家の
建具にはまず使われる事は
なかったであろう・・・・
などと昔に思いを馳せていると、
紅茶が運ばれてきた。

旅先では旨い紅茶が飲めないので
ついコ-ヒ-を飲むことが多い。
久々の紅茶であったせいか美味しく頂いた。

通リへ出て、
古い佇まいの街並みをゆっくりと歩く。
軒先で小さな粒の琵琶を老婆が売っていた。
夜のデザ-トに一山買っておく。
こんな買い物も旅の中の楽しさのひとつである。

古い街並全体は「重要伝統建物群」に選定され、
保存に力を入れているようであるが、
木曽の妻籠、馬込ほどの
「造りもの」の感がなく、返って好感が持てた。

街並みから少し離れた所に、
本格的な歌舞伎劇場
「内子座」があるというので行ってみた。




1985年、
復元された建物ということであるが、
当時の(大正五年=1916年)まま
の雰囲気がただよい
タイムスリップしたようである。

当日は興行がなく、
内部をどうぞご覧くださいと勧められ
舞台、客席。
回り舞台や迫(せり)の仕掛けのある、
奈落の底まですべて見る事ができた。

「内子」は思いがけない収穫であった。

主目的以外行き当たりばったりの旅は、
思いがけない喜びもあるかわり
なんの収穫もなくがっかりすることもある。
その、がっかりも含めて、
旅の楽しさだと思っているので
緻密な計画を立てた旅はしたことがない。

人生という大きな旅も、
振り返ってみると行き当たりばったり、
これも勿論本人は楽しんでいるが
連れ添ってきた人は、常に、
はらはらしてついてきたようである。
しかし、もうここまで来てしまえば、
奈落の底でも、
どこでも付いて行くより仕方があるまいと、
最近は腹を括っているのかもしれない。

人生の長旅も余す所は少ないであろうが、
もう少し、終わらせずに頑張ってみよう。
四国のたびはこの後、
松山へ行き一泊して、
翌2日夕方無事帰宅した。

第1回、3回、4回でトンボや花
の写真はご覧頂きましたが、
風景など、その他の写真を纏め
ご覧いただけるよう、アルバム
できましたすのでご覧下さい。



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